不安を越えて
NO.016
菌
難関校に在籍していた彼は、学校の強制的な姿勢に対してしだいに強い嫌悪感を抱くようになっていきました。些細なことで担任ともめ、それがきっかけで不登校になりました。それから、学校に関するものには、「菌」が付着していると言い出すようになっていきました。
俺の気持ちがわかりますか?
最初の面談でした。「学校のノートや電子辞書、カバンに、みんな菌がついてるんです。その上に俺の服とかが置かれて、それが違う場所に移動されると菌も移動する。そこを知らずに踏んでしまうと、部屋中に菌が移ってしまうんです。俺が安心できる場がなくなるんです」彼は、そういって涙を浮かべたのです。
強迫的行動
結局、学びの森に入学を決めたことをきっかけに、学校に関するものはすべて処分してもらいました。一からのスタート、リセットです。頭のいい子でしたから、あらゆることを的確に理解してくれました。ただ強迫的な行動は、その端々で見られましたが、あまりそこに注目はしませんでした。それよりも前に向かっていこうとする彼の姿勢に注目していきました。
システムエンジニアをめざして
「出会い場」という学びの森のプロジェクトで、彼はゲストに独立されたシステムエンジニアの方を呼んできました。システムエンジニアの仕事に興味を持っていたのですが、果たしてそれで食っていけるかどうかを確かめたかったのでしょう。結局そのプロジェクトがきっかけで、彼はシステムを学ぶ学科へと進学していくことになったのです。つい先日も、大学の演劇部で舞台に立ったことを報告してくれていました。