ひきこもり経験から研究者に
NO.001
中学に通ったのは、たった1ヶ月
彼は私たちが初めて出会った不登校の生徒でした。彼と出会うことがなければ、学びの森はなかったかもしれません。そんな大事な生徒だったわけです。彼は中学校をほぼ1ヶ月しか行っていませんでした。いじめが原因で、中学入学早々、連休明けには行けなくなっていました。最初の頃は、家で勉強することもあったようですが、やがてそれもしなくなり家にいることが多くなっていきました。学びの森に行き始めた頃には完全にひきこもり、クリニックにも通い「対人不安」ということで薬も飲んでいました。
学力が自信をつくった
彼は本が好きだったこともあり、私たちは読解を中心にやっていこうということを提案しました。それからいろんなジャンルの本を大量に読み始め、やがて結構難解な入試問題も解けるようになっていったのです。するとそのことに自信をつけたのか、今度は英文法にも取り組み始めました。今から思うと、あの時の学力の定着が彼の行動そのものも変えていったようです。だんだん自分で買い物に行き始め、本屋で立ち読みをし、映画を見に行くようになっていきました。
高校では生徒会に
中学卒業後、彼は学力をしっかり身につけるためにあえて1年間の浪人生活を選択しました。受験前の偏差値は60ぐらいにはなっていたと思います。進路は公立高校の定時制へ。またいけなくなるんじゃないかという不安と、いろんな人たちと関わりながら学ぶことを望んでいたからです。そして高校では、生徒会活動に積極的に参加し人間関係の幅を広げていきました。
大学院でひきこもり研究を
その後、大学は学費免除の特待生として入学し、ひきこもり研究を始めました。自分の経験が少しでも社会の役に立てばという思いだったそうです。そして大学卒業後は、他大学の大学院を受験し本格的に研究生活に入ります。現在は、NPOで働きながら博士論文に取り組んでいます。