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日誌

トラウマを抱えて

不登校の子どもたちの中には、
深い心の傷(トラウマ)を抱えた子どもが
少なくありません。


あまり自己表現が得意じゃないヨシオは、
自分がどうして学校へ行けなくなったのかを
うまく説明できませんでした。
「ただ何となく・・・・」
「辛かったから・・・・」
そのコトバのどれもに
しっかり伝わってくる感じがありません。
ヨシオの両親は
彼が小学生の時に離婚されていました。
上の二人の兄弟は、当時高校生と中学生でした。
お母さんから話を聞くと
別れたお父さんは、お母さんの知らないところで
子どもたちを精神的に追い込んでいたといいます。
やがてその事実が判明し両親は離婚へと進むのですが
そのドロドロとしたやり取りに
3人の子どもたちは巻き込まれていったのです。
この時、問題になるのは子どもの年齢です。
ヨシオは、当時小学生でした。
精神的な虐待が
いつから始まったのかは不明ですが
少なくとも、離婚へと向かうやり取りを
ヨシオは低学年で経験するのです。
何も状況がわからない中で
両親がいがみ合い
ののしりあい
感情的になっていく・・・・
その時、ヨシオはまだ十分に
状況を整理できるコトバを持っていなかったのです。
この時、コトバを介さない
大変重い状況は、
トラウマとして記憶の中へとしまい込まれるのです。
お母さんは
「この子はまだ幼かったからよくわかってないと思ってました」
そうおっしゃっていました。
そうなんです。
よくわからなかったんです。
でもよくわからなかったから
いつまでも処理できずに
ヨシオに今でも不安を与えているのです。
もしも、これまでに
誰かとこのことを共有することができていたなら・・・
そうできていれば、彼は誰かの手を借りてでも
この重すぎる経験を言語化していたかもしれません。
そして一旦言語化できたものは
あとで、そのコトバを変えることができるのです。
コトバを使ってストーリーを変えることができるというわけです。
ちょうど私たちが、やっている「森の語り場」は
そういったナラティブセラピーとしての意味を持っているのです。
ヨシオは、この語り場で
自分の過去と向き合うことができました。
そしてそれを誰かと共有し、
自分でその不安を乗り越えました。
トラウマを抱える子どもたち
私たちはヨシオの他にも様々な子どもを見てきました、
いじめを受けた子ども
事件に巻き込まれた子ども
親の自殺と向き合った子ども
友達の事故死を経験した子ども・・・・
そこには様々なケースがあるのですが、
そこにコトバがある限り
トラウマは必ず解決します。
私たちはそう信じて
今日も活動を続けているのです。
ヨシオ、高1になった彼は今
高校のサッカー部に所属し
高校生活を楽しんでいます。
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