うまくいかない状況から考える
先日、かねてから生徒たちがやりたいと言っていた「調理実習」をおこないました。
ここに至るまで、いろんな議論を重ねました。
そもそも「調理実習」ってなんでするの?
実施するときのお金や器材は自分たちで用意しなくていいの?
用意できないなら、どうしたらいいかな?
それらをみんなで考えて、メニューを決め、お金と器材を用意してもらうための嘆願書を書き、交渉をしたうえでの今日という日でした。
やっとここまできたか…。
そんな思いがみんなの中にはあったと思います。
そして、ここまできたらあとは楽しいことが待っている!という思いも。
しかし、現実はそんなに甘くありませんでした。
実際調理をしてみないと、レシピには書かれていない難しさが続出…。
「はちみつぐらいの粘り」ってどんくらいの粘りやねん!
倍の量作りたかったら材料そのまま倍使ったらいいん?
レシピ通り作ってたけど、全然かたまらんやん!
厨房は軽くパニックになってしまいました。
でも、一つ一つの場面で、みんなでどうしたらいいかを考えます。
当然、考えがぶつかります。
絶対こうしたほうがいい!
うちではこうやってやってんねん!
俺はこうしたいねん!
みんなのことも考えろよ!
そんなやり取りが続く中、一人の生徒がついに爆発してしまいました。
「おもんない。もう調理実習は二度とやらん。」
この言葉に私も他の生徒もなんだかどんよりした雰囲気に…。
私はその一言で、今までの苦労や今こうして頑張っていることが全部否定されてしまう気がしました。
そして、その生徒に対して感情的に言葉をぶつけてしまいました。
<なんでみんなで頑張ってんのにそんなこと言うん?!めっちゃ嫌やわそういうの!>
「だっておもんないし。うまくいかんねんもん。」
<うまくいかんからおもんないとか、まだ最後までやってないのに二度とやらんとか言うなよ。>
「…もういい。」
そう言ってその生徒は、それからの調理には参加せず、ふてくされながら片づけを徹底的にやっていました。
最終的な結果は、正直いまいち。
兵糧丸はできたのですが、堅焼きが甘すぎたのと、堅くなるまで焼ききれませんでした。
生徒たちの顔も晴れやかではありませんでした。
調理実習の結果より私は、さっきのやりとりがずっと気になっていました。
感情的に「そんなこと言うな」と言ってしまったけど、本当にそう言い切ってよかったのか?
「うまくいかない」という言葉の意味をちゃんと聞かないまま、頭ごなしに言いたいことだけ言ってしまったんじゃないか?
そんなことがずーっとぐるぐる回っていました。
どうしようか迷って、他の生徒に相談してみたところ、やっぱり自分が悪い部分もあるなぁと思って謝ることにしました。
そして、その「うまくいかない」の意味をしっかり聞いてみることにしました。
<さっきは話ちゃんと聞かへんままに自分の言いたいこと言ってごめん。>
「もういいっすよ別に…。」
<さっき言ってた「うまくいかへん」ってどういう意味なん?>
「なんか、みんなと一緒にやりたいし、レシピ通りやりたいけど、なんかうまくいかんって意味。」
<そうか…うまくやりたかったんか…。じゃあ片づけずっとしてたのはなんでなん?>
「掃除とか片づけはうまくできるから。というか、やった分だけ結果が目に見えるから好きやねん。」
その子にとっては、うまくやろうと思ってもうまくできないことがたくさんあったのかもしれません。
それと同じ状況が、今回の調理実習でも再現されてしまって、「もう二度としたくない」と思ったのかもしれません。
そんな背景を、あったかどうかは置いといて、考えなかったことを後悔しました。
当たり前ですが、うまくいっているときは問題は起きませんし、課題も見えません。
うまくいかないときほど、誰かの、そして自分自身の課題が浮き彫りになるんだと思います。
今回の「調理実習」は私にとって、またもしかしたらその生徒にとって、課題が浮き彫りになった出来事なのかもしれません。
だからこそ、日常の中のうまくいっている状況だけではなく、うまくいかない状況からいろんなことを考えたいなぁと思いました。