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日誌

彼女から教えられたこと

 言葉を選びながら、彼女は一生懸命に訥々と語ってくれました。時にはうつむき、時には顔を上げ、塾長に導かれながら・・・
 彼女はいつも控えめです。いつも人に気を遣い、人の嫌がる仕事も嫌がらず、少し微笑みながらみんなの輪の中心から少し離れたところでたたずんでいます。
 「とってもいい子」・・・ 私の彼女の第一印象はそんな感じでした。知誠館ではベテラン?に入る彼女に分からないことはなんでも聞いていました。4月から知誠館に入った私にとっては、彼女は落ち着いた、信頼できる頼りになる中学3年生だったのです。




 しかし、話には聞いていましたが、彼女の語るたった15年間の「彼女の歴史」は、50年生きた私のものとは比べ物にならないくらい重いものでした。まだ十分に理解できず、考え整理することも出来ないくらい幼い頃から身を置いている環境の中で、抗うこともなく過ごしてきたようです。自然と今の彼女に通じる生き方が身に着いたのでしょう。そんな彼女が知誠館にやって来た時は、終始うつむき他人にその存在を知られないようにしているかのようだったそうです。前に出ず、目立たず…


 そんな彼女の昔を知っている他の子ども達から「明るくなってよかったね」とか「かわったね」と言われ、少し自信有り気に「変われたと思います」と答えた彼女は、にっこりと笑っていました。
 少なくともここ知誠館で過ごしている彼女は、以前の彼女ではありません。人に気遣いは忘れませんが、自分の意見を言い、仲間達と協調しながら知誠館での生活を送っています。学校に行けなくなった他の子ども達と共感するところもたくさんあったからでしょう。ここで彼女は自分を出せるようになってきています。小学校5年生からアウラに通い、中学1年生秋から知誠館に来ることになった彼女は、体の成長とともに仲間達や塾のスタッフに出会ったことで心も成長していったのです。
 そんな、お互いのことを認めあえる知誠館の仲間は、本当にお互いを育て合っています。みんな器用ではありませんが、人のいいところを認めあえる力を持っています。それはきっと、彼ら彼女らが体験してきた辛い思いが作り上げたものなのだろうと思います。負の体験から様々な力をつけていくこの子たちは本当にすごい。本当に心に刻んだ感情から来るだけについた力が本物になるのだと思います。
 彼女はこれから大人になり社会に出ていきます。多くの人と関わっていくでしょう。「人」との思い出が辛いだけでなく、楽しく暖かいものになってくれていると信じています。