母と息子の距離感
7月23日(土)に「親の語り場」がありました。
今回は知誠館の卒業生のお母さんと、在校生のお母さんのおふたりが参加してくださいました。
その中で私が印象に残ったことをブログに書きたいと思います。
最近どんな感じですか?
私は卒業生A君のお母さんに尋ねました。
すると、そのお母さんは
─そうですねー…(一人暮らしが始まって息子が)家からいなくなったら、めちゃくちゃ楽になりました。今までは何とかしないとって思ってたけど、もう好きにしいって、何かあって本人から連絡がきたときにまた考えようって思ってます。
と、清々しさ8割、寂しさ2割(あくまで私の印象です)の表情で話してくれました。
きっと、こうしたことが言えるようになるまで、ずいぶん闘ってこられたんだと思いました。
それは、A君が知誠館に来る経緯を聞いたことがあったからです。
A君は高校のときに不登校になり、学校が嫌で嫌で仕方なくなりました。
論理的な思考に長けていたA君は、こんなことを考え始めます。
学校は自分を脅かす「菌」が蔓延している。
その学校に持って行っていたカバン、履いて行っていた靴、使っていたペンや消しゴム…そのすべてに「菌」がついている。
それらを置いていた家、自分の部屋にも「菌」が。
その部屋のドアに触れた手にも「菌」が、その手で触った机やソファ、食器にも「菌」が、その机を拭いた布巾にも「菌」が。
「菌」、「菌」、「菌」、、、。
もう自分の家は「菌」に侵されている。
でも、誰もこの気持ちはわかってくれない…
そんなボロボロの状態でA君は知誠館にやってきたそうです。
論理的に考えられるからこそ、一度組み立てた強固な論理を壊すことは容易ではありません。
でも知誠館に通い始めて、少しずつその論理が緩んでいきました。
そして、自分のやりたいことも見つかり、今年の4月から大学に通っています。
大学生活が始まるにあたり、一人暮らしも始まりました。
A君のお母さんがそのときのことを語ってくれたのですが、それがまたA君らしさ全開で面白かったんです。
─引っ越しの日にね、その日着ていくシャツとズボンとパンツと洗濯して、自分はその間にお風呂入って、まだ乾いてない服着てサンダル手にもって出ていきました。まだ3月の寒い時期やのに…。
これはA君なりの禊と訣別だったのではないでしょうか。
濡れたままの洗濯したての服を着て、体をきれいに洗って菌を落とし、裸一貫で家を出ていく。
この徹底ぶりがA君っぽいなぁと思って感動していました。
こうして、母親との訣別を終えて始まったA君の一人暮らしですが、入学式の前にまたひと悶着あったそうです。
─入学式着ていく服もなかったみたいやし、生活用品をそろえるのもかねて一緒に買い物行ったんですけど、一通り買い物終わってか別れてから電話がかかってきてね。「なんでこなことするんや!家はいられへんやんか!」って泣きながら電話してきたんですよ。だからもう私も「もうそれやったら捨ててくれていいから、全部捨てて帰り」って言ったんです。
これもまた印象的でした。
こういうのを、心理学の言葉では「母子分離」というんだと思います。
それは、母親と息子(娘)が自律した個人として生きていく上でとても大切なことです。
A君とお母さんは、先述した二つの物語の中でこの「母子分離」を成し遂げたと私は思います。
それは、どちらかが一方的に別れを告げるだけでは成立しないものだと思います。
A君とお母さんのように、ちゃんとお互いが向き合い、両者の同意の上で成立するものだと思います。
お母さんの話を聞いて、「母子分離」とは、「もう二度と会わない」みたいな今生の別れではなく、「また会う日まで」みたいな約束を交わしたうえでの別れを私はイメージしました。(買い物のときのエピソードは多少過激でしたが…笑)
母と息子の距離感は良いほうにも悪いほうにも作用すると思います。
だから、その時々に適した距離感をお互いに模索することが必要なのではないでしょうか。
私も恥ずかしながらこの歳になってから一人暮らしをしております。
母はなにかと口うるさく、「ちゃんとご飯食べてるか?掃除しにいったろか?洗濯は?水回りは風水的に清潔にしとかなあかんで、この前の探偵ナイトスクープな…」とまくし立ててきます。
私はそれに対して「はいはい、うんうん、わかったわかった」とテキトーに返事をしているんですが
A君とお母さんのエピソードを聞いて、ちゃんと向き合って母子分離しないとなぁと思いました。
というわけで、「さらばおかん!またいつの日か!」
まぁこのブログ見てないから意味ないんですけど…。
親の語り場は、こんな感じでふだんなかなか言えないことを語り、それを参加者で共有できる安心・安全な場となっております。
これをご覧になって、興味を持たれた方はぜひ次回の語り場に参加してみてください。
次回は9月10日(土)の10:00から、アウラ学びの森 知誠館で開催します。
お申込みは 0771-29-5800 まで、気軽にお電話くださいませ!
今回は知誠館の卒業生のお母さんと、在校生のお母さんのおふたりが参加してくださいました。
その中で私が印象に残ったことをブログに書きたいと思います。
最近どんな感じですか?
私は卒業生A君のお母さんに尋ねました。
すると、そのお母さんは
─そうですねー…(一人暮らしが始まって息子が)家からいなくなったら、めちゃくちゃ楽になりました。今までは何とかしないとって思ってたけど、もう好きにしいって、何かあって本人から連絡がきたときにまた考えようって思ってます。
と、清々しさ8割、寂しさ2割(あくまで私の印象です)の表情で話してくれました。
きっと、こうしたことが言えるようになるまで、ずいぶん闘ってこられたんだと思いました。
それは、A君が知誠館に来る経緯を聞いたことがあったからです。
A君は高校のときに不登校になり、学校が嫌で嫌で仕方なくなりました。
論理的な思考に長けていたA君は、こんなことを考え始めます。
学校は自分を脅かす「菌」が蔓延している。
その学校に持って行っていたカバン、履いて行っていた靴、使っていたペンや消しゴム…そのすべてに「菌」がついている。
それらを置いていた家、自分の部屋にも「菌」が。
その部屋のドアに触れた手にも「菌」が、その手で触った机やソファ、食器にも「菌」が、その机を拭いた布巾にも「菌」が。
「菌」、「菌」、「菌」、、、。
もう自分の家は「菌」に侵されている。
でも、誰もこの気持ちはわかってくれない…
そんなボロボロの状態でA君は知誠館にやってきたそうです。
論理的に考えられるからこそ、一度組み立てた強固な論理を壊すことは容易ではありません。
でも知誠館に通い始めて、少しずつその論理が緩んでいきました。
そして、自分のやりたいことも見つかり、今年の4月から大学に通っています。
大学生活が始まるにあたり、一人暮らしも始まりました。
A君のお母さんがそのときのことを語ってくれたのですが、それがまたA君らしさ全開で面白かったんです。
─引っ越しの日にね、その日着ていくシャツとズボンとパンツと洗濯して、自分はその間にお風呂入って、まだ乾いてない服着てサンダル手にもって出ていきました。まだ3月の寒い時期やのに…。
これはA君なりの禊と訣別だったのではないでしょうか。
濡れたままの洗濯したての服を着て、体をきれいに洗って菌を落とし、裸一貫で家を出ていく。
この徹底ぶりがA君っぽいなぁと思って感動していました。
こうして、母親との訣別を終えて始まったA君の一人暮らしですが、入学式の前にまたひと悶着あったそうです。
─入学式着ていく服もなかったみたいやし、生活用品をそろえるのもかねて一緒に買い物行ったんですけど、一通り買い物終わってか別れてから電話がかかってきてね。「なんでこなことするんや!家はいられへんやんか!」って泣きながら電話してきたんですよ。だからもう私も「もうそれやったら捨ててくれていいから、全部捨てて帰り」って言ったんです。
これもまた印象的でした。
こういうのを、心理学の言葉では「母子分離」というんだと思います。
それは、母親と息子(娘)が自律した個人として生きていく上でとても大切なことです。
A君とお母さんは、先述した二つの物語の中でこの「母子分離」を成し遂げたと私は思います。
それは、どちらかが一方的に別れを告げるだけでは成立しないものだと思います。
A君とお母さんのように、ちゃんとお互いが向き合い、両者の同意の上で成立するものだと思います。
お母さんの話を聞いて、「母子分離」とは、「もう二度と会わない」みたいな今生の別れではなく、「また会う日まで」みたいな約束を交わしたうえでの別れを私はイメージしました。(買い物のときのエピソードは多少過激でしたが…笑)
母と息子の距離感は良いほうにも悪いほうにも作用すると思います。
だから、その時々に適した距離感をお互いに模索することが必要なのではないでしょうか。
私も恥ずかしながらこの歳になってから一人暮らしをしております。
母はなにかと口うるさく、「ちゃんとご飯食べてるか?掃除しにいったろか?洗濯は?水回りは風水的に清潔にしとかなあかんで、この前の探偵ナイトスクープな…」とまくし立ててきます。
私はそれに対して「はいはい、うんうん、わかったわかった」とテキトーに返事をしているんですが
A君とお母さんのエピソードを聞いて、ちゃんと向き合って母子分離しないとなぁと思いました。
というわけで、「さらばおかん!またいつの日か!」
まぁこのブログ見てないから意味ないんですけど…。
親の語り場は、こんな感じでふだんなかなか言えないことを語り、それを参加者で共有できる安心・安全な場となっております。
これをご覧になって、興味を持たれた方はぜひ次回の語り場に参加してみてください。
次回は9月10日(土)の10:00から、アウラ学びの森 知誠館で開催します。
お申込みは 0771-29-5800 まで、気軽にお電話くださいませ!