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日誌

生きてくれているだけで・・・

その日、良太のお父さんが「親の語り場」で当時のことを話してくれました。


「とにかく、良太は落ちていくスピードが速かったんです。
きっかけは、友達関係だったように思います。
何か小さなことがきっかけだったんですが
学校への行き渋りが始まったかと思うと不登校になり、
気が付くと、部屋に閉じこもりきりになっていきました。
その頃は、家族ともあまりしゃべらなかったですね」
「どうされたんですか?」
「とにかく、わずか一ヶ月くらいの間に
いろんなことができなくなっていった。
親としたら、どうしていいか分からなくなって
いろんなところに相談に行きましたよ。
でも、解決の糸口も見つからなくて・・・。
それである人から、病院を紹介されたんです。
薬をもらうようになって、少しは気分が上がってきたわけです」
「その一番大変だったときは、どんなことを思われてました?」
「そうですね。親もどうしていいかわからないままでした。
あの時は自殺するんじゃないかって思っていたように記憶しています。
だから、ただ生きていてくれるだけでいいって思ってましたよ」
「生きていてくれるだけでって?」
「そうです。究極は、そう思えるんです。
学校に行けないとか
朝起きれないとか
そんなことは、究極な状況ではどうでもよくなるんです。
ただ、生きていてくれるだけでいい。
それが、親の意識の底にあると思うんです」
「でも普段は、そのことを忘れてしまう?」
「そうです、忘れてしまうんですよ。
でも究極に追い込まれると、思い出すんです。
親としては、子どもが生きてくれているだけでいいんだと・・・
そう思うと、目の前の子どもを受け入れられるんです。
すべては、そこから始まっていった気がしますね」
現在、良太は大学生です。
高校を中退した段階で知誠館に通いだし
大学受験を経て、大学生活を楽しんでいます。
「ただ、生きてくれているだけで・・・」
良太の両親が、いったんそこを受け入れだしたことから
彼はもう一つの自分の人生を描き出したのかもしれませんね。