元証券マンの話
私が大変親しくさせてもらっている元証券マンがおられます。
歳は私とほぼ一緒、彼は2年前に大手証券会社を早期退職して今は銀行のアドバイザーとして働いている。
「会社が社員のことをどこまで考えているかということに、疑問があった」彼は私にそんなことを話してくれました。もはや、会社が個人の人生の物語を保証できない時代に入ったのかもしれません。
社会には大きな物語と小さな物語があります。大きな物語は、会社や地域といった組織の物語です。そして小さな物語とは、個人の、あるいは家族の物語です。かつては、大きな物語は、小さな物語を保証したのです。だから会社のために働くことは、個人の幸せを意味したという訳です。まさに「御恩と奉公」という日本の伝統的な文化観が生きていたのでしょう。
でもバブル以降の経済の低迷、あるいは不透明性がその文化そのものを揺るがしていきました。会社は会社で、その生き残りをかけたサバイバルに勝っていかないといけなくなった訳です。今や、マーケットそのものが世界へと拡大していく中で、世界中の企業と対峙する必要性さえ出てきたのです。
証券業界では、大規模な損失が出ると大規模なリストラ、あるいは早期退職を募る必要が出てきました。身軽な状態にしていかないと、企業そのものが持たなくなるからです。そしてそんな渦の中に個人の小さな物語は翻弄されていくのかもしれません。
元証券マンは、「私にとっての幸せって何だろう?」「私は何を優先して生きていきたいんだろう?」そんなことを考えたと言います。つまり、この時とても大事になってくるのが、その個人がどう生きていきたいのかという方向性のように思うのです。まさに個人の主体が問われ始めるのです。
私たちの消費社会は、個人の主体を壊す方向に機能してきました。J.ボードリヤールはこれを「消費社会における主体喪失」と呼びましたが、まさにそんな状況を私たちは生きているのです。例えば私たちが何かを買った時、それは私たちが選んでいるのか、選ばされているのかの区別がつかないことがあります。その境目がきわめて曖昧になっているのです。私たちは日々選んでいるようで、実は選ばされているのです。そして知らず知らずの間に、自分自身を失ってしまっているのではないでしょうか?
だから、自分がどういきたいのかということがわからなくなってしまう。そんな状況の中で、会社から早期退職を迫られ、初めて自分自身がこれからどう生きていきたいかを問う機会を手に入れた訳です。
彼は、今の生活に大変満足しているようでした。そして定年後は、若者たちのキャリアサポートをしながら自分自身の経験を社会へと還元したいと話してくれました。まさに彼自身の物語が動き始めたのかもしれませんね。
歳は私とほぼ一緒、彼は2年前に大手証券会社を早期退職して今は銀行のアドバイザーとして働いている。
「会社が社員のことをどこまで考えているかということに、疑問があった」彼は私にそんなことを話してくれました。もはや、会社が個人の人生の物語を保証できない時代に入ったのかもしれません。
社会には大きな物語と小さな物語があります。大きな物語は、会社や地域といった組織の物語です。そして小さな物語とは、個人の、あるいは家族の物語です。かつては、大きな物語は、小さな物語を保証したのです。だから会社のために働くことは、個人の幸せを意味したという訳です。まさに「御恩と奉公」という日本の伝統的な文化観が生きていたのでしょう。
でもバブル以降の経済の低迷、あるいは不透明性がその文化そのものを揺るがしていきました。会社は会社で、その生き残りをかけたサバイバルに勝っていかないといけなくなった訳です。今や、マーケットそのものが世界へと拡大していく中で、世界中の企業と対峙する必要性さえ出てきたのです。
証券業界では、大規模な損失が出ると大規模なリストラ、あるいは早期退職を募る必要が出てきました。身軽な状態にしていかないと、企業そのものが持たなくなるからです。そしてそんな渦の中に個人の小さな物語は翻弄されていくのかもしれません。
元証券マンは、「私にとっての幸せって何だろう?」「私は何を優先して生きていきたいんだろう?」そんなことを考えたと言います。つまり、この時とても大事になってくるのが、その個人がどう生きていきたいのかという方向性のように思うのです。まさに個人の主体が問われ始めるのです。
私たちの消費社会は、個人の主体を壊す方向に機能してきました。J.ボードリヤールはこれを「消費社会における主体喪失」と呼びましたが、まさにそんな状況を私たちは生きているのです。例えば私たちが何かを買った時、それは私たちが選んでいるのか、選ばされているのかの区別がつかないことがあります。その境目がきわめて曖昧になっているのです。私たちは日々選んでいるようで、実は選ばされているのです。そして知らず知らずの間に、自分自身を失ってしまっているのではないでしょうか?
だから、自分がどういきたいのかということがわからなくなってしまう。そんな状況の中で、会社から早期退職を迫られ、初めて自分自身がこれからどう生きていきたいかを問う機会を手に入れた訳です。
彼は、今の生活に大変満足しているようでした。そして定年後は、若者たちのキャリアサポートをしながら自分自身の経験を社会へと還元したいと話してくれました。まさに彼自身の物語が動き始めたのかもしれませんね。