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日誌

転移と逆転移

「教えることは、学ぶことである」


これは、宮城教育大学の学長だった林竹二先生のコトバです。
林先生によれば、「教える」ことと「学ぶ」ことは、まさに同義語なのです。
私たちは、子どもたちに多くのことを教えているように見えますが、実は多くのことを学ばせてもらっているということをそのコトバは物語ります。




「転移」と「逆転移」は、心理学、主に精神分析領域のコトバです。


一般的には、子どもたちが指導者からいろんな影響を受けていく過程で指導者の存在を自分自身の中に内在化させたり、その関係の中に自分の直面する問題を映し出したりする過程を指します。
そして「逆転移」は、その逆。今度は子どもたちの存在が指導者の中に内在化していきます。


大事なことは、これらの方向性のことなる動きがそれぞれ別々に生じていくのではなく、同時に起こってしまうということです。つまり双方向に影響を及ぼしあうような関係性が、そこに生じていくというわけです。そして、まさにこの点が「教えることは学ぶことである」ということと重なるわけです。


私たちは子どもたちに様々な影響を与えている一方で、様々な影響を受け取ってしまっているわけですが、その影響の中身に果たして質的な優劣や量的な大小があるのでしょうか?


もしそれがないとしたら、いったい「指導」というものは何を意味するのだろう?という問いに行き当たってしまいます。つまり、指導とは何かという定義そのものがあいまいになっていくわけです。


「転移」と「逆転移」それらの相互的な動きに目をやっていくと、そこに見えてきたものは、その根っこの概念に対する省察です。これはまさに再帰的な問いであり、その根本の意味の再構築に他ならないように思います。


私自身がこうやって多くを語れるのは、私自身に多くことを学ばせてくれた子どもたちのおかげだと、私はいつも思うのです。