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日誌

よっっしゃ!

 顔がほどけた…。
 彼は集合時間からみんなから少し離れ、いつも通りつかず離れずの距離を置き、黙って私達のかたまりの後方から付いてきていた。
 「何も期待していない…」彼の顔から見てとれた。


 日頃の知誠館の生活の中で、彼からの私へのコミュニケーションはほとんど無い。感情も見せてくれない。「打ち解ける」とか「馴染む」とか、そこまではいかないにしろ、普通に話しくらいはしたいなぁとずっと思っていた。私の担当する英語が嫌いなのか、私という存在が鬱陶しいのか、彼との関わり方が私の中での最大の課題だった。私以外の面々ともさほど変わらない関わり方をし「どうでもええねん」と塾長に話していた彼を「今度の家島で変わるかも…」とみんなどこかで期待していた。
 そんな彼が姫路からチャーターしてもらった漁船が走り出したとたん、波しぶきを見て笑った・・・。
顔がほころんだどころではない。完全にほどけた。
2013年10月27日 姫路からチャーターしてもらった漁船にて
こんな顔するんや・・・ よっしゃ!
 目が合った時、恥ずかしかったのかすぐにいつものクールな彼に戻った。でも海を見て嬉しそうだった。やはり一人でいたが、ずっとどこか楽しそうだった。漁師さんの船に移り、自分から魚を掬いにも行った。顔は笑っていないが楽しんでいたのはわかった。
 
 知誠館ではみんなと一緒に昼ご飯を食べない彼が、島の高校生戸の交流で共に作ったご飯を食べる時に「お寿司、もっともらっていいですか」とおかわりまでした。「醤油…」と彼からのコミュニケーション。思わず「ハイ!」と声が高くなってしまう。なんか「やったぁ…」と一人小さなガッツポーズ。
 島の子達に教えてもらいながらイカの皮をむいたり、刀を振り回すように玉ねぎのみじん切りをしたり、お雑魚のカラ入りをしたり・・・ したくなかったら隠れていることも出来たのに、彼はずっとその場に居、指示されるようにあらゆる作業を手伝った。これまた「よっしゃ!」
 最後、島の高校生と別れる時、知誠館の子ども達とはあまり話さないのに、島の子と「同じ年」と言って嬉しそうに話していた。
 
 無表情な彼とどう関わって行くか… 今日から全てが上手くいくとは思っていません。でも彼の「感じることが出来る部分」「どうでもいいと思わない姿」を見ることが出来て、これほど実のある日はなかったなぁと感じ、帰ってきました。