教育長の訪問
先日、京都府の教育長および学校関係者の方々が、ここ学びの森を訪問されました。
教育長と言えば、京都府のすべての幼稚園・小学校・中学校・高校のトップにあたる人です。
そんなものすごい肩書の方が、学びの森の生徒たちが普段どのように学習を進めているのかを見に
また、学校や教師に対してどんな思いを抱いているのか?学びの森での生活はどうか?
将来どんな道に進みたいと考えているのか?などを、直接生徒たちに聞きに来られたのです。
ピンポーン♪とチャイムが鳴って、スーツをビシッと着こなした方々が入ってきました。
結構威圧感あるけど、生徒ら緊張したりするんかな?なんて思っていたら
一人の女の子が、「こんにちは!」と元気に挨拶しました。
さすが学びの森の生徒たち、鉄の心臓です。
挨拶された大人のほうが驚いているように私には見えました。
個別学習を見学されていても、生徒たちは普段通り。
スタッフや他の生徒と対話しながら、時には教育長に絡みながら学習を進めていました。
その後、中学生2人と、高校生3人に協力してもらい
教育長との対話の場が実現しました。
最初の質問は、学びの森に初めて来たときの印象は?というものでした。
それぞれ生徒が話し始めます。
学校の教室っぽくないのが良かった、あったかい雰囲気だった、などなど。
その話を聞きながら、私もそれぞれの生徒が初めてここに来た時のことを思い出しました。
学校の勉強に意味を感じられない、もっと面白い学び方をしたい─。
アニメや動画が好き、PCにはこんな便利なソフトがある─。
ここ気に入ったからすぐに体験に来たい─。
住んでるところがすごく田舎で、周りの価値観と合わない─。
勉強についていけなくなるのが心配、でも生活リズムが─。
それぞれがそれぞれの思いを持ちながら、ここにやってきて今にいたる。
普段一緒に学んでいると、最初の記憶は忘れがちですが、それも大事な彼、彼女らの物語なんだ
ということを改めて感じました。
次の質問は、学校のどういうところが嫌だったか?
ある男の子は部活の上下関係や周りとの同調圧力が
またある女の子は部活動の過密スケジュールや女子同士の人間関係が嫌だったと話しました。
みんな「それあるある~!」と大盛り上がり。
教育長も昔は「みんなと同じようにする」のが嫌だったそうです。
教育長ら学校関係者の方々には少々耳の痛い話かもしれませんが、
みんなそれぞれの肩書を外し、個人としてしっかりと受け止めてくれていました。
生徒たちの意見は、今の教育の課題の本質でもあると教育長はおっしゃっていました。
私は私なりの文脈で盲目的に学校へ通い続けていましたが、生徒たちはそこに違和感を覚え
立ち止まって考える資質があったんだなぁと改めて感じました。
教育長からの最後の質問は、今現在の不安と、将来どうなりたいか?でした。
私は個人的にこの質問に対するみんなの回答に一番衝撃を受けました。
ある男の子は、「大学を出て就職し、自立した生活を送りたい。でも高校3年間で今まで積み残してきた
学習をもう一度積みなおせるのかが不安だ。」と語りました。
またある女の子は、「私は早く『ふつうの』高校生になりたい。今は『ふつうじゃない』けど、高校に行って
もう一度『ふつうの』道を歩きたい。でもまたどこでつまづくかわからないのが不安。」と語りました。
他にも、自分と同じような経験をした子どもに関わるような仕事に就きたい、
今までの価値観を壊して新しい価値観で生きていこうとする葛藤のさなかにある、
大学で色んなことを研究したいけど今の生活リズムではダメかも…など、生徒たちはそれぞれの思いを語ってくれました。
みんなそんな風に考えていたんだ、とびっくりしました。
学びの森に来て、色んな話をして、色んな時間を共有してきたつもりでしたが、
案外そういう素朴な不安について聞いたことはありませんでした。
いや、たとえ私が聞いたとしてもこんな風に素直に言葉が返ってきたかはわかりません。
教育長たちが問いを投げかけたからこそ、出てきた言葉なのかもしれません。
しかし、生徒たちは学びの森に通いながら、色んな葛藤を抱き続け、それについて考え続けているんだと思いました。
また、そうやって考えていることを他者に伝える力もあるんだと思いました。
─こいつら「不登校」なのかな?
本当にそう思いました。
学校には行ってないけど、学びの森に来て学習をしている。
色んなことを自分の頭で考えて、言葉にできる。
それを自分の殻に閉じこもることなく、他者に伝えることができる。
なんだか、「不登校」というイメージから想像される生徒像とはかけ離れているように思います。
これっていったいなんなんでしょうか?
この場での(いや、どこでも?)生徒の姿を見ていると、どうにもわからなくなりました…。
そんなこんなで、教育長の訪問は私にとって
生徒たちのすごさを改めて知ったり、「不登校」について改めて考える機会になりました。
今日の出会いが、今後の政策にどのように反映されるのか、見ものですね。