できることは、たくさんある
学びの森では、学校や家庭と連携を取り、定期テストをうちで受けることができます。
テストは受けたいけど、教室に入るのが怖い…。
クラスのみんなと一緒にやるのはまだ無理そう…。
そんな生徒たちが安心してテストを受けられるように、連携することを大切にしています。
それは何よりも、子どもの学習権を守るためでもあります。
しかし、学びの森での学習だけでは、学校と同じようなペースで学習をすすめるのは簡単ではありません。
体調や生活リズムが崩れて休みが続くと、定期テストまでに範囲が終わらないこともあります。
また、認知特性やその子の信念から、ひたすら暗記して詰め込んでいく学習が合わないこともあります。
私の担当している社会では、特にこのことが課題になります。
私自身は、社会が好きだったし暗記も得意でした。
そして、知識を詰め込んでいくタイプの学習も否定していません。
でも、本来学ぶことは楽しいことだと思うので、一緒に学んでいる生徒がそれで苦しむ顔はあまり見たくありません。
でも、テストを受けて学校からきちんと評価されたい、点数を上げたいと考えるその子の気持ちも無碍にできません。
この葛藤が私の中でずーーーっとあるように思います。
せっかくやし、今までとは違う学び方を一緒にしたいという気持ち。
学校の勉強にもメリットはあるし、その経験を積んでおくのもありだと思う気持ち。
自分が面白いと思う学び方で学んで、学校のテストでも点数が取れたら最高なのかもしれませんが
現実はそうあまくないです。
こうした葛藤を抱えながらも、常に持っておかなければならない視点があることに
この前改めて生徒から教わりました。
その子は社会の暗記がとても苦手で、覚えたことはすぐに忘れてしまいます。
集中が続かず、ときどき問題集を「解く」というよりは答えを埋める「作業をする」みたいになってしまうことも。
毎回頑張るのですが、テストになると太刀打ちできない。
そんな状況が続いて、本人ももう我慢の限界ならぬやる気の限界という感じでした。
ミーティングや本人との話し合いを重ね、次からは学習の方法を変えてみることに。
定期テストの対策よりも、まず日本の歴史の流れを押さえることができるように
また、自分が覚えたことをひとつの概念としてまとめられるような方法を考えました。
それがこちら!
私も小学校から中学校まで、というか今でもお世話になっている『まんが日本の歴史』シリーズです。
その子もまんがは好きということだったので、読んでもらうことにしました。
そして、問題集のような一問一答は無し!
Q. 縄文時代ってどんな時代か知らんから教えてー!
とだけ書いて、あとはその子に任せました。
まんがを読み終えると、問題に取り組み始めます。
なんとまぁ書く書く!
自分の面白いと思ったことを、文章にしてどんどん書いていきます。
こんな生き物をとって食べていた、こんなものを作っていた、この時代からお酒はあったと思う…
などなど、ツッコミどころは満載でしたが、それを材料にまた対話ができました。
感想を聞いてみると、
「今までの問題集はわからんままやってたけど、今日のはわかりながらできた」
と言っていました。
今まで自分が関わっていて、こんな楽しそうに社会の学習をしていたときはないように思います。
問題集をまんがに変えて、問い方を変えただけ。
ただそれだけのことで、面白くないが面白いに変わる。
その子も、その子に関わる人も
できることは、たくさんある。
改めて、その視点を大事にしていきたいなと思いました。