ブッククラブ、「西の魔女が死んだ」を読む①
こんにちは。学びの森のタナカです。
学びの森では、第2・第4金曜に、「ブッククラブ」という読書会が開催されています。
-「ブッククラブ」について
地域の方と、不登校やひきこもりの若者たちを対象にした読書会です。かつて読んだことがある本、名前は知っているけれど読む機会がなかった本、今話題の本、そんな本(作品)の中から一つをとりあげ、いろんな視点から読みこんでいきます。
みんなの読みをつきあわせる中で、思わぬ発見があったり、自分がこうだと思い込んでいた読みががらりとかわったり…という、スリリングな体験ができればと思います。
目的は、「読むことを愉しむ」こと。
「予習・復習」など面倒なことは一切なしです。
昨年度は「方丈記」を読んだこのブッククラブ。
その時の模様はこちら。
→「鴨長明おそるべし…」
今年も古典に行くのかしら…?と思いきや、今回みんなで読んでいる本はこちら。
そう、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」です。
みなさま一度はタイトルを耳にしたことがあるのではないでしょうか。
私はもう10年以上前、中学生の頃に読んだ記憶。
私は読んだ小説のストーリー、登場人物の名前やキャラクターといった大切な要素をすっかり忘れてしまうのですが、読んだ当時の文章から受けたイメージ、描かれている世界の空気感、その湿度感、香り、そこで動いた心のざわつき方、紙の質感、フォント…といったものが記憶に残るタイプでして、この小説も然りでした。
久しぶりにこの本を開いてみて、中学生の頃に読んだ時に受けたそんな諸々の印象をぶわっと思い出しました。
今年度の参加者は学びの森の高校生たちが主。
ここで初めて読む子もいれば、以前読んだことがある子もいて…と状況は様々ですが、みんなで一緒にひとつひとつの文章をじっくり読んでいきます。
この日最初に注目したのは、この冒頭の文章。
西の魔女が死んだ。四時間目の理科の授業が始まろうとしているときだった。まいは事務のおねえさんに呼ばれ、すぐお母さんが迎えに来るから、帰る準備をして校門のところで待っているようにと言われた。何かが起こったのだ。
ここについて、桜井先生から、こんな問いが投げかけられます。
「西の魔女が死んだ」という、タイトルにもなっているこの一文。作者はなぜこの文で改行せず、続けて次の文を書いたのか?
………なんやそらーーー!考えたこともなかったーーーー!!
と、最初は思うのですが、考えれば考えるほど本当に「何でやろう?」と思うんですよね。
この前に「西の魔女が死んだ」というタイトルからどんなイメージが喚起されるか、どんなことを連想するかをみんなで出し合ったこともあり、そのタイトルが持つ意味の深さ、喚起されるイメージの豊かさを認識している分、ますます不思議になってくるのです。
こんなに特別な「西の魔女が死んだ」という一文を、どうして独立した1行としなかったのか?
正解はありません。
ある問いかけに対して、参加者のみんなでいろんな意見を出し合い、「ああなるほど」と思ったり、「いやそれは私はちゃうと思う」「そんな読み方もあったんか」と思ったりする。
これが、学びの森のブッククラブなのです。
冒頭に掲載したブッククラブの説明文にもあるように、「みんなの読みをつきあわせる中で、思わぬ発見があったり、自分がこうだと思い込んでいた読みががらりとかわったり」する経験をするのが、このブッククラブの醍醐味。
このあとは参加者の生徒からもおもしろい問いが投げかけられ、あっという間に時間が過ぎていきました。
自分ひとりで読む時は決してしない、こんな読み方。(少なくとも私は。)
ブッククラブでしかできないような「読み」の経験に圧倒されながらも、いち参加者としてめちゃくちゃ楽しんでしまった2時間弱でした。
こうして「みんな」で読むことに堪えうるような、積み重ねられた一文一文が緻密な作品だからこそ、10年ぶりに本を開き少し読み進めただけで、「わたし」が中学生の頃に読んだいろんな感情の記憶がわきでてくるような作品でもあるんだろうなぁと、改めてこの本のすごさに感じ入りもしたのでした。
次回開催は来週の金曜日、10月13日です!
一般参加も喜んで受け付けておりますので、興味がおありの方はぜひ一度のぞきに来てみてください。
申込フォームは → こちら
私も来週をめちゃくちゃ楽しみにしている参加者のひとりです。
では、みなさまよい週末をお過ごしください。